真保裕一特別インタビュ―(第2回)

 真保裕一は、ここにこだわって小説を書く!


自分の好きな人間を書きたい

――前回は、「黄金の島」を書くきっかけや、ベトナム取材の話をしました。ネタばれをおそれるあまりに抽象的な話に終始して、実に不評だったわけですが(笑)。今回は、「黄金の島」で真保裕一という作家にはじめて触れるという方、また、「真保裕一とはどんな作家であるのか」をもっともっと知りたいというディ−プなファンの方に、真保裕一さんに、その「創作の秘密」を語っていただきます。まずは、真保さんは、小説を書き始める前に、綿密なプロットを書くということについて。綿密に書いて、そして、そのプロットを何度も書き直し練り上げていく。最初に「黄金の島」のプロットを読んだときは、あまりの綿密さに、担当の私もびっくりしました。ここまでやるか、と。

真保 いつも、僕は、ラストまでスト−リ−を作ってから小説を書きだすんです。これはアニメをやっていたときからの習慣で、今も身に染み着いている。何しろアニメは、シナリオや絵コンテでラストまで話を何度も練り上げながら作っていくものですからね。最後のシーンを先に決めることで、ここは余分なシーンだとか、ここはもっと詳しく書いておこうかという計算ができる。自分としては最後のシーンを書くために話を書き進めているという感覚があって、最後が決まっていないと書き出せないんです。

――これまで真保さんと話をして感じたのは、真保さんの小説の主人公像というのは、自分のなかに自分なりのプリンシプル(規範)を強く持っていて、自分との戦いのなかで葛藤して克服していくという人物が多いと思うんです。主人公とはこうあるべきだという、真保さんなりの「信念」というのはあるのでしょうか。

真保 いきなり答えづらい質問だ(笑)。

――まあまあ。いろいろ担当者も考えてるんっすよ。

真保 それじゃあ、お答えしましょう。実は、主人公というのは、作品ごとに最もその内容にふさわしい人物を作り上げていったほうがよいのではないかと考えています。シリ−ズキャラクタ−を作っていないのも、そのためなんですよ。それが理想ではあるけれども、やはり自分の好きな人間を書きたいという思いがあるのである程度、主人公像は、似てきてしまうわけです。

――主人公の言動をみても、自分はこれだけは守る、この一線だけは外さないという、ギリギリのところで踏みとどまっている人たちですね。

真保 そうですね。やっぱり僕は、登場人物に感情移入してお話を運ばせたいという気持ちが、捨てきれずにある。ですから、作者としての、そうありたいという願望などが、ついつい顔を現わしてしまったりするわけです。

――自分のなかのギリギリの線を捨てたくないというのは、時にその主人公にとって弱点にもなり、窮地に追い込まれたりする……。

真保 そしてそれは作者の弱点でもあるんですよ。弱点でもあるけれど、それが読者の人たちの共感してくれる部分につながれば嬉しいと思う。裏を返せば「また(人物像が)一緒かいな」ということもつながるかもしれないけど(笑)。

――私も個人的には、自分のなかに信念があって、弱さだと知りつつも、やっぱりそこを外さない人間というのが好きですね。

真保 新しい小説を書き始めるたびに、今回は主人公像をどう変えるか、あるいはどこを変えないのかというところは、本当によく考えるんですよ。もっと人物を描くのに、違ったアプロ−チもあるんじゃないかとかね。


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